あい サンプルシーン1

【あい】
「お、お兄ちゃん……。もう少し近づいてもいい……?」

【修悟】
「ふぁっ!? お、おういいぞっ?」

思わず声が上ずってしまった。我ながら恥ずかしい。

おちつけーおちつけー俺。
ただ妹に身体を洗ってもらうだけだ。

何もやましいことはない。明鏡止水、色即是空……。

【あい】
「じゃ、じゃあ……その、しつれいしまーす……」

【修悟】
「お、おうっ」

【あい】
「…………」

【修悟】
「…………、あい? どうした」

中々近づいてこないあいを不審に思い、
恐る恐るに声をかける。

【あい】
「ふぇっ!? え、えと、その……」

【あい】
「あのね……えっと……。
いまさら恥ずかしくなってきちゃった……」

【修悟】
「っ——!」

【あい】
「えっ!? どうしたのお兄ちゃん、大丈夫」

【修悟】
「いやなんでもない。
ちょっと頭を打ち付けて冷静になっただけだ」

【あい】
「……え、ええ??」

あいが恥ずかしがるのは分かる。年頃の女の子だ。

じゃあ、どうして俺までが、
こんなに恥ずかしくなっているんだ。

【修悟】
「(落ち着け俺。そんなに恥ずかしがってどうする?
……いや別に恥ずかしがってはいないけどなっ!?)」

なんでこんなに心臓がバクバク言っているんだ。
決まってる、浴室の中が熱いからだ。

湿度と温度が高くて、のぼせそうになっているんだ。

決して、何が間違っても、
恥ずかしがっているあいに、ときめいたりはしていない。