【あい】
「お、お兄ちゃん……。もう少し近づいてもいい……?」
【修悟】
「ふぁっ!? お、おういいぞっ?」
思わず声が上ずってしまった。我ながら恥ずかしい。
おちつけーおちつけー俺。
ただ妹に身体を洗ってもらうだけだ。
何もやましいことはない。明鏡止水、色即是空……。
【あい】
「じゃ、じゃあ……その、しつれいしまーす……」
【修悟】
「お、おうっ」
【あい】
「…………」
【修悟】
「…………、あい? どうした」
中々近づいてこないあいを不審に思い、
恐る恐るに声をかける。
【あい】
「ふぇっ!? え、えと、その……」
【あい】
「あのね……えっと……。
いまさら恥ずかしくなってきちゃった……」
【修悟】
「っ——!」
【あい】
「えっ!? どうしたのお兄ちゃん、大丈夫」
【修悟】
「いやなんでもない。
ちょっと頭を打ち付けて冷静になっただけだ」
【あい】
「……え、ええ??」
あいが恥ずかしがるのは分かる。年頃の女の子だ。
じゃあ、どうして俺までが、
こんなに恥ずかしくなっているんだ。
【修悟】
「(落ち着け俺。そんなに恥ずかしがってどうする?
……いや別に恥ずかしがってはいないけどなっ!?)」
なんでこんなに心臓がバクバク言っているんだ。
決まってる、浴室の中が熱いからだ。
湿度と温度が高くて、のぼせそうになっているんだ。
決して、何が間違っても、
恥ずかしがっているあいに、ときめいたりはしていない。